黒川紀章の死

黒川紀章氏が死んだ。突然のことでショックであり、全身から力がぬけていくのをどうしようもない。黒川さんには、やってもらいたいことがまだまだたくさんあった。もしも会うことができたら、聞いてみたい事もいくつかあった。それが叶わないのは残念である。いまおもえば、黒川さんは自分が長くないことを悟って、命がけで選挙にうって出たりしたのだろうか。多くの人の目には奇妙に映ったろうけど、そうだと分かっていれば見方もまた変わったのかもしれないと思ったりする。が、憶測は遠くまで行かない方がいい。

とにかく、ぼくにとって黒川紀章は、1番とは言えなくても、3番目か4番目には憧れの建築家だった。昨日も黒川紀章のことを考えていた。東京で大阪で福岡で、奈良で沖縄で、クアラルンプールでメルボルンで、パリで、どこに旅しても黒川さんの建築があった。クリーンで爽やかな白の内部空間は、師・丹下健三ともまたちがう、彼固有のものだ。伝統とモダニズムの関係を考える上でも、今後も繰り返し参照するだろう。黒川さんの肉体は死んでも、建築は思想は生きつづける。かわらずぼくたちを勇気づけてくれる。あのようなメディア・アーキテクトはもう出てこない。いつか人類は黒川紀章に感謝する日が来るだろう。黒川さん、そのときまで、ゆっくり眠ってください。